夜の客人

私は『蜘蛛の糸』が好きだ
(略)
私はきっと寂しい人なのだろう
夜、たびたび現れる蜘蛛にある種の愛おしさを覚えていたこともあった
都会のごく普通の部屋に現れるような蜘蛛、特に害は無いだろう
だが縁起の良いものでもないだろう
躊躇いながらもティッシュで潰す
いつも味わう罪悪感
私は蜘蛛を外に逃がしてやれるほど器用でない
蜘蛛もまた地獄に落ちた私を救えるほど器用じゃないだろうと
(略)
虚しい